2004 NY tour
「せっかく行ったのに、入られへんかったやんか。残念!」と、嘆くのは“ファット・キャット”のオーナー、ミッチェル・ボーデン。
清水ひろみ(Vo)&多田恵美子(P)トリオのニューヨーク・デビュー・コンサートのファースト・セットは「ソールド・アウト!」の大人気。彼女のデビューを見守るべく遥々日本から駆け付けた応援団も吃驚仰天のレポートを、お届けいたしましょう。
先頃、『スマイル』でデビューしたばかりの清水ひろみが、そのCDリリース・コンサートを2004年10月24日に“NYブルーノート”で敢行。サンディ・ブランチでは異例のソールド・アウトという輝かしいデビューを飾った彼女の魅力は、「妖精のようなルックスとメランコリックで透き通った歌声」。 喧騒のマンハッタンに暮らす人々に必要な事、それは、「何処かノスタルジックで、甘く切ない遠い過去に呼びかけるようなメロウな時間にとっぷりと浸る」非日常的なひと時。まさしくそのニーズにぴったりの彼女の歌声が、ニューヨークの人々を魅了した。
観客の中に居たジョージ・アバキャンは、コロムビア・レコードでサッチモ、シナトラ、ビリー・ホリデイ、ドリス・デイ、エリントンだけでなくあのマイルスの『ラウンド・ミッドナイト』をプロデュースしたことでも知られるのは言うまでもない。
その彼に「こんな魅力的な歌声はもっと多くの人に聞いてもらわないと!是非、今度の火曜日“バードランド”で歌ってみなさい!」さらに「次のCDは是非プロデュースしたいな」と、思いもかけない朗報に一番驚いたのは、当の清水ひろみかもしれない。
観客の中には他にヴァーヴのプロデューサー、ブライアン・コニアーツ、ケン・ドラッカー、テオドラ・クスラン、ホリス・キング、ESP Discの創始者バーナード・ストールマン、写真家チャック・スチュワート、サッチモ・ハウスの館長マイケル・コグスウェル夫妻、ラッガース大学のルイス・ポーター教授、ジャズ・レコード・センターのフレッド・コーエン夫妻も駆け付け、そしてアート・ブレイキーの娘エイブリン、レジー・ワークマン、ジョン・ヒックス、ソニー・フォーチュン、ジーン・ジャクソン、ベット・サスマン(ピアニストで、元ホイットニー・ヒューストンの音楽監督)らミュージシャンの姿も。
遠く英国からはジャズ・ライター、ボブ・ワイアーもやって来て、「こんな素敵な歌手が日本に居たなんて、信じられない!さっそくこのCDのレビューを書くよ」と驚く。ESPディスクのバーナード・ストールマンは、「日本語の歌をジャズ・アレンジで録音させたいね」と提案。ドミニカのダンサー、シルビア曰く、「絶対サント・ドミンゴの音楽祭でも歌ってよ」とあちこちから誘いの声。
まさにシンデレラ・ガールとは彼女の事で、そのサクセス・ストーリーが“NYブルーノート”で、現実にぼくの目の前で起こっているのだ。